・終端速度って何ですか?
たまに、終端速度について質問しに来る生徒がいますが、簡単に言えば『速さが一定になったときの速度』のことをいいます。
では、どういう時に速度が一定になるのか、今回は例題とともに確認していこうと思います。
この問題ができれば、終端速度の問題はもちろん、電磁気分野のコイルの理解も深まりますので、知っている人も、もう一度やってみるのが、おすすめです!
✔この記事の内容
・終端速度の例題
・終端速度のグラフの概形
✔この記事の信頼性
苦手だった物理を、浪人時に偏差値65以上センター試験満点近くまで伸ばした、参考書には書かれていない、考え方や勉強法について、必要なエッセンスを『ぎゅっと』凝縮してまとめています。
【電磁気の分野の注意点】
極力微積は使わないように説明していますが、電磁気の分野では微積を使うことで理解が深まる場所は、微積を使っています。
微積といっても、数Ⅱ数Ⅲの教科書例題レベルなので、身構えなくても大丈夫です!
【例】
・\(v=\frac{dx}{dt}\)
・・・(分子)の(分母)変化と読む。今回は、(位置)の(時間)変化なので、速度のこと
・\(a=\dot{v}=\ddot{x}\)
・・・ドットで微分を表す。2回微分であれば、ドットの数は2つ。
物体が自由落下する終端速度の問題
例題
質量mの物体が空気中を落下するとき、空気抵抗は物体の速さ\(v\)に比例し、\(kv\)(\(k\)は比例定数)であるとする。時刻\(t\)のときに初速度\(v_0\)で放し、重力加速度を\(g\)とする。
(1)物体の速さが\(v\)である瞬間の加速度の大きさを求めよ。
(2)物体に速さはやがて一定(終端速度)になる。この時の速さ\(v_f\)を求めよ。
(3)物体の\(v-t\)グラフの外形を描け。また、\(t=0\)における傾きを図中に示せ。
※いつも通り、まずは自分で考えてみましょう!自分で解くことで、『解くうえで何が足りないのか』が明確になります!
それでは解いていくよ!
終端速度(1)の解答
例題
質量mの物体が空気中を落下するとき、空気抵抗は物体の速さ\(v\)に比例し、\(kv\)(\(k\)は比例定数)であるとする。時刻\(t\)のときに初速度\(v_0\)で放し、重力加速度を\(g\)とする。
(1)物体の速さが\(v\)である瞬間の加速度の大きさを求めよ。
力学の問題は、力を描いてから運動方程式を立てるのが基本ですね!
今回は、空気抵抗と重力を描いてあげればおしまいです。
そのあとは、運動方向と同じ方向に加速度の正方向を取りましょう。
今回は、軽く微分にも慣れてほしいので、加速度は『\(v\)ドット』の形で書きました!
なるべく微積は使わないけれど、電磁気の分野など『微積を使った方が理解が深まる』ところに関しては、微積を使っていくから、少しずつ慣れてね!
はい、では運動方程式を立てると、
$$m\dot{v}=mg-kv$$$$\therefore \dot{v}=g-\frac{kv}{m}・・・答え$$
となります。
終端速度(2)の解答
例題
質量mの物体が空気中を落下するとき、空気抵抗は物体の速さ\(v\)に比例し、\(kv\)(\(k\)は比例定数)であるとする。時刻\(t\)のときに初速度\(v_0\)で放し、重力加速度を\(g\)とする。
(2)物体に速さはやがて一定(終端速度)になる。この時の速さ\(v_f\)を求めよ。
さて、終端速度は『速度が一定』のときの速度でしたので、言い換えれば、加速度が0ということになります。
(1)の運動方程式
$$\dot{v}=g-\frac{kv}{m}$$の$$\dot{v}=0$$として、解くと
$$\therefore v_f=\frac{mg}{k}・・・答え$$
となります。
終端速度(3)の解答
例題
質量mの物体が空気中を落下するとき、空気抵抗は物体の速さ\(v\)に比例し、\(kv\)(\(k\)は比例定数)であるとする。時刻\(t\)のときに初速度\(v_0\)で放し、重力加速度を\(g\)とする。
(3)物体の\(v-t\)グラフの概形を描け。また、\(t=0\)における傾きを図中に示せ。
今回は、グラフの概形が書ければいいから、なんとなくでいいんだ!
グラフは『通る点と傾き』がわかれば、おおよその形は描くことができます!
今回は、\(v-t\)グラフをかくので、グラフの傾きは『加速度』になります。
ココがポイント
\(t=0\)のとき、速度は0だから、運動方程式に代入すると、
$$m\dot{v}=mg-k0$$$$m\dot{v}=mg$$$$\therefore \dot{v}=g>0$$
となり、\(t=0\)では傾きが正であることがわかります!
$$\dot{v}=g-\frac{kv}{m}$$
さらに、上の式((1)の答え)から、速度\(v\)が増加すればするほど、マイナスの部分が大きくなるので、左辺にある加速度は次第に減少することがわかりますね。
そして、最終的に、加速度が0になって、終端速度\(v_f\)((2)の答え)の値になります。
整理すると、
➀\(t=0\)のとき、グラフの傾きは\(g\)
➁\(v\)が増加すると、空気抵抗が大きくなり、加速度(グラフの傾き)は次第に減少する
➂加速度が0のときの速度は、終端速度((2)の答え)になる
上のことを踏まえて、グラフの概形を描くと、以下のようになります。
終端速度のグラフは、上のような形のグラフになるので、覚えておきましょう!
まとめ:空気抵抗がある自由落下問題では終端速度が聞かれる!
今回は、終端速度について、例題を通して話してきました。
『終端速度』といわれたら、『加速度が0になる速度』と思い出せればOKです!
そして、今回の運動方程式では、わざと微分を使って解いてきましたが、理由は電磁気のコイルのところで、似た形が出てくるからなんです。
これが理解できていれば、電磁気のコイルでつまずくことはありませんので、しっかりとできるようにしておきましょう!