・交流問題の解き方がわからない
・参考書を見ても問題が解けない
私も高校生のときに、独学で交流回路の解き方について勉強していましたが、まったく解けずに、大学は不合格になりました。
浪人して物理の成績を伸ばした今言えることは、『交流回路ってやること直流回路と変わらないな』ってことです。
そこで今回は、参考書に書いてない交流問題の解き方について、今回はベクトルを使って解くやり方について、紹介していきます。
この記事を読めば、交流回路だけなく、直流回路の問題も得意にできるので、最後まで見ていってください。
✔この記事の内容
・交流回路のベクトルを使った解き方
・交流回路の例題とインピーダンス
✔この記事の信頼性
苦手だった物理を、浪人時に偏差値65以上センター試験満点近くまで伸ばした、参考書には書かれていない、考え方や勉強法について、必要なエッセンスを『ぎゅっと』凝縮してまとめています。
【電磁気の分野の注意点】
極力微積は使わないように説明していますが、電磁気の分野では微積を使うことで理解が深まる場所は、微積を使っています。
微積といっても、数Ⅱ数Ⅲの教科書例題レベルなので、身構えなくても大丈夫です!
【例】
・\(v=\frac{dx}{dt}\)
・・・(分子)の(分母)変化と読む。今回は、(位置)の(時間)変化なので、速度のこと
・\(a=\dot{v}=\ddot{x}\)
・・・ドットで微分を表す。2回微分であれば、ドットの数は2つ。
交流回路の解き方はたった2つ!
交流回路の問題って、テクニックで解くみたいなのがありますが、そんなものは使い方を間違えてしまえば、満点どころか0点になってしまいます。
特に、物理のエッセンスは、テクニック的なことしか書いていないので、参考になりません。
それでは、どうやって解けばいいのか、解き方はたった2パターンしかありません。
交流回路の解き方
➁電流・電圧を最大値で置いて、位相のずれを考えてベクトルで解く!
解き方は、上の2通りあるのですが、前回は➀の微積の知識を使って解くやり方について、紹介ましたので、今回はベクトルを使ったやり方について、話していきます。
※前回の記事は【交流回路の解き方は2パターンだけ!RLC回路の例題とともにわかりやすく解説!!】を参照
それでは、前回と同じ例題で、並列交流回路の問題を解いていこう!
例題
例題
上の図のように、交流電源に抵抗、コイル、コンデンサーがつながれている。抵抗の大きさ、コイルの自己インダクタンス、コンデンサーの容量、および、各部分に流れる電流を図のように定めた時、次の問いに答えよ。
(1)\(i_R,i_C,i_L\)を求めよ。
(2)回路全体のインピーダンスZを求めよ。
※いつも通り、まずは自分で考えてみましょう!自分で解くことで、『解くうえで何が足りないのか』が明確になります!
それでは、解説していきます。
(1)の解答
例題
上の図のように、交流電源に抵抗、コイル、コンデンサーがつながれている。抵抗の大きさ、コイルの自己インダクタンス、コンデンサーの容量、および、各部分に流れる電流を図のように定めた時、次の問いに答えよ。
(1)\(i_R,i_C,i_L\)を求めよ。
交流でも直流でも、回路問題の解き方は『手順』が決まっていました。
回路問題の解き方
➁オームの法則を使って抵抗にある未知数を求める
➂回路方程式を立てて、電荷や電流を求める
※回路方程式とは、キルヒホッフの法則(電流保存、電位1周で電位差0)や電荷保存の式のこと
今回は、コイルもあるので、仮定した電流とは逆向きに誘電起電力を描きましょう!
そして、前回と違うところは、今回はベクトルを使って解いていくので、このやり方をするときには、回路内の電流・電圧は、すべて最大値で仮定します!
ココがポイント
【最初にやること】
➀電流を最大値で仮定する。(この時電圧も最大値で仮定する)
➁オームの法則を使って求める。(コイル、コンデンサーに関しては、インピーダンスの式を使う)
➂電流保存の式を立てる。(電荷保存とキルヒホッフの第二法則は書いてもいいが、やらなくても出る)
上でたくさんのことをやっていますが、すべて描き込むと大したことはありませんよ!
ん?抵抗、コイル、コンデンサーにかかる電圧の最大値も、電源電圧の最大値と同じ\(v_0\)ですか?
導線でつながっているところは、すべて等電位(高さが一緒)だから、回路を色分けすると、オレンジと水色の2色に分けられるよね?
電源電圧は、水色からオレンジに向かって、電位が\(v_0\)上がっているから、同じ色の変化をしている場所も、電位差は\(v_0\)なんだ!
ココに注意
交流回路では、オームの法則のようなインピーダンスの式$$X_e=\frac{v_0}{i_0}$$
がありました。これを使えば、各素子にかかる電流・電圧の最大値、インピーダンスの大きさがわかるのでした。
コイル、コンデンサーのインピーダンスは、\(\omega L,\frac{1}{\omega C}\)でしたので、それぞれの素子に対してインピーダンスの式を立てると、
$$R=\frac{v_0}{i_{R0}} \therefore i_{R0}=\frac{v_0}{R}・・・➀$$$$\omega L=\frac{v_0}{i_{L0}} \therefore i_{L0}=\frac{v_0}{\omega L}・・・➁$$$$ \frac{1}{\omega C}=\frac{v_0}{i_{C0}} \therefore i_{C0}=\omega Cv_0・・・➂$$
となります。
これで、各素子にかかる電流の最大値がわかったので、位相のずれを考えていきます。
交流の電流・電圧って、(最大値)×(基準からのタイミングのずれ)でできてるから、タイミングのずれ(位相のずれ)さえ求めてしまえば勝ちだよ!
タイミングの基準ってなんですか?
今回は並列回路だから、すべての素子で電圧が変化するタイミングが同じだね!(同じ電圧がかかっているということ)
つまり、今回は電圧の位相\(\omega t\)が基準になるんだ!
位相の基準の決め方
⇨電流が基準!
・並列回路⇨すべての素子に、同じタイミングで、同じ大きさの電圧がかかる
⇨電圧が基準!
電源電圧$$v=v_0sin\omega t$$を基準にすると、
・抵抗⇨位相はずれない
・コイル⇨電圧より\(\frac{\pi}{2}\)遅れる
・コンデンサー⇨電圧より\(\frac{\pi}{2}\)進む
ので、それぞれに流れる電流は、位相のずれを考慮して、
$$ \therefore i_R= i_{R0}sin\omega t(位相はずれない)・・・➃$$$$ \therefore i_L= i_{L0}sin(\omega t-\frac{\pi}{2})(\frac{\pi}{2}遅れる)・・・⑤$$$$ \therefore i_{C}=i_{C0sin}(\omega t+\frac{\pi}{2})(\frac{\pi}{2}進む)・・・➅$$
まずは、➀を➃に代入して$$i_R=\frac{v_0sin\omega t}{R}・・・答え$$
➁を⑤に代入して、sinをcosに変換して$$i_L=-\frac{v_0}{\omega L}cos\omega t・・・答え$$
➂を➅に代入して、sinをcosに変換して$$i_C=\omega Cv_0cos\omega t・・・答え$$
となります。
このやり方は、微積を使わないので、計算が苦手な人でもできますね!
ココがポイント
➁インピーダンスの式を使って、式を素子の数だけ作る!⇨最大値が求まる!
➂基準からの位相のずれを考えて、式を作る!
(2)の解答
例題
上の図のように、交流電源に抵抗、コイル、コンデンサーがつながれている。抵抗の大きさ、コイルの自己インダクタンス、コンデンサーの容量、および、各部分に流れる電流を図のように定めた時、次の問いに答えよ。
(2)回路全体のインピーダンスZを求めよ。
ココがポイント
⇨斜辺の長さが最大値!
(2)は、全体のインピーダンスを求めたいので、回路全体の電流・電圧の最大値がわかればOKです。
回路全体の電圧の最大値は、電源電圧$$v=v_0sin\omega t$$の\(v_0\)なので、電流の最大値を求めてしまえば、インピーダンスを求めることができます。
回路全体の電流\(i\)は、\(i=i_R+i_L+i_C\)なので、位相のずれを考慮して作図していきます。
作図の手順
➁基準位相とズレがない、抵抗の最大値を、\(x\)軸上に描く
➂基準位相から\(\frac{\pi}{2}(90°)\)進んでいるか、遅れているか考慮して、コイル・コンデンサーの電流の最大値を描く
今回の基準位相は、並列回路なので、電圧位相が基準位相になります。
基準位相に対して、コイルは\(\frac{\pi}{2}\)遅れ、コンデンサーは\(\frac{\pi}{2}\)進むので、それを作図すると以下のようになります。
コイルとコンデンサーの矢印、どっちが長いのか気になる人もいるかもしれないけど、電流の最大値は斜辺の『長さ』で決まるから、コイルの方の矢印を長く描いても大丈夫だよ!
最大値は、斜辺の長さになるので、回路全体を流れる電流の最大値は$$v_0\sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2+\left(\omega C-\frac{1}{\omega L}\right)^2}$$
となります。
最後は、インピーダンスの公式を使っておしまいですね!
電圧の最大値\(v_0\)と、電流の最大値\(v_0\sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2+\left(\omega C-\frac{1}{\omega L}\right)^2}\)を
$$Z=\frac{v_0}{i_0}$$に代入して、
$$Z=\frac{v_0}{i_0}$$$$=\frac{1}{\sqrt{\left(\frac{1}{R}\right)^2+\left(\omega C-\frac{1}{\omega L}\right)^2}}・・・答え$$
となります。
インピーダンスは、抵抗みたいなものだから、直列回路と同じように、回路全体の電流と電圧を求めればいいという方針になるね!
まとめ
今回は、交流回路をベクトルを使って解いてきました。
やったことは、たった3つです。
ココがポイント
➁インピーダンスの式を使って、式を素子の数だけ作る!⇨最大値が求まる!
➂基準からの位相のずれを考えて、式を作る!
結局、交流は『電流・電圧の最大値』と『基準位相からのずれ』さえわかってしまえば、簡単にに解けるということです。
なので、交流回路を解くときには、上の2つを意識して解くようにしましょう。